第37回日本小児外科学会 秋季シンポジウム / PSJM2021

ご挨拶

第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム

会長金森 豊

(国立成育医療研究センター小児外科系専門診療部外科)

このたびは第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム会長を仰せつかりまして、誠に光栄に存じます。本学会の歴史ある会を運営するにあたり身の引き締まる思いでございます。
さて、今回の主題は、再生医療と小児外科、です。先天性疾患を扱う小児外科の分野では、重要な臓器・組織、細胞の欠損による疾患群が多く存在します。ここ数十年は、そのような不足している部分を移植という方法で補う医療が進歩してまいりました。従来ですと救命できなかった胆道閉鎖症・肝硬変の患児が肝移植で救命できるようになったことは大きな進歩であり、私が若かったころの疾患や治療に対する概念は大きく変化いたしました。しかし、移植医療もまだ完全な医療とは言えない側面があります。免疫抑制剤の使用に起因する感染症や、拒絶の問題は術後の患児の予後を左右する解決すべき重大な課題です。その課題を解決するべく次の世代に託されたもう一歩進んだ医療が再生医療ではないかと考えます。臓器や組織を人工的に作り出すという医療は、まさに患児に対して神の手を差し伸べるに等しい医療です。そしてその医療がすでに一部の分野では実現しつつあるのが現実です。小児外科の分野でも、近々再生医療を応用した新しい医療が始まることと信じるに足る研究成果も出てきております。今回のシンポジウムではそのような最先端の医療についての研究の現状をご報告いただき、今後の発展に向けた実りある議論ができればと思っております。

皆様のご協力を賜りまして、充実したシンポジウムが開催できますように準備してまいりますので何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、本シンポジウムは、特別にプログラム委員長として、再生医療の分野に造詣の深い古村眞先生に就任を要請し、プログラムの内容・構成について助言・企画をお願いしております。

コロナ禍の落ち着かない世の中ではございますが、新しい世の中の模索の一環として、小児外科における再生医療にも一筋の光明が差しますように祈りつつご挨拶とさせていただきます。

第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム

プログラム委員長古村 眞

(東京大学大学院医学系研究科 組織幹細胞・生命歯科学講座)

このたび第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム会長の金森 豊先生から秋季シンポジウムプログラム委員長を仰せつかりました。誠に光栄に存じます。

私ども小児外科医は、小児外科黎明期からの先達の努力を堅実に受け継ぎ、現在では全国的に一定レベルの小児外科医療を提供することがほぼ可能となりました。そしてその発展の軌跡をさらに推し進めるため、近年様々な理由で起こる組織・臓器の欠損を補うために、代替え組織や臓器を欠損部位に補充する移植医療が行われています。

そして現代は、この医療をさらに進展させるために次のステップとして小児における再生医療の発展が必要な時期にあると思います。そのためには多くの前臨床研究を経て、医師主導治験や臨床研究といった地道な過程がまだ必要です。技術的な問題だけでなくレギュレーション等についても整備が必要です。しかし、昨今の医療技術の進歩により、小児の組織・臓器の欠損を再生医療技術によって治療することはすでに夢物語ではなくなりつつある、との認識を持っております。

会員の皆様にとって、有意義なシンポジウムになるよう、秋季シンポジウム会長とともに学会の企画をさせていただきたいと存じます。多くの学会員の皆様に御参加いただき、積極的な討論を通して、今後のさらなる発展のきっかけを共有できればと心より願う次第です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

第40回日本小児内視鏡外科・手術手技研究会

会長内田 広夫

(名古屋大学大学院 小児外科学)

このたび、PSJM2021の一環として伝統ある日本小児内視鏡外科・手術手技研究会を開催させていただくことになりました。私が小児外科を志し始めた頃は、「日本小児外科手術手技研究会」という会でした。次第に小児外科にも内視鏡手術の劇的な広がりがみられ、1997年から「日本小児内視鏡手術研究会」が新たに開催され、2002年より同時開催、2004年に現在の「日本小児内視鏡外科・手術手技研究会」となっております。ご存知の通りこの研究会は手術手技に関して専門的な議論が活発に飛び交う、小児外科医にとって緊張感があふれる中に多くのことを学べる会ですので、開催に関わらせていただく機会を得て、大変光栄であるとともに身の引き締まる思いです。

今回のテーマは「真の低侵襲手術を目指して」とさせていただきました。内視鏡手術がこのように大きく広がりましたのは、開放手術と同じ手術ができるのであれば、より小さな傷で、なおかつ手術の痛みも軽減させて欲しい、という患者側のニーズが大きいのは間違いありません。同時に技術革新により、より精細に拡大した画像をリアルタイムで見ることができるようになったことも大きな要因です。もう一つの要因としては、多くの外科医が持ち合わせている、新たなことに挑戦し成し遂げたいという特性も関係あるかもしれません。もちろん私達みんなが手術侵襲を少なくしたいと考えているのは間違いありません。一方で従来の開放手術と比較して低侵襲な手術といえるためには、従来の手術と同等もしくはよりよい結果をもたらす手術であることが最低条件だと考えられます。その点から新たに導入されてきた内視鏡手術が本当に低侵襲なのか、長期的にも問題は起きないのかということは常に考えなければならない命題そのものだと思われます。つまり「真の低侵襲」とは決して内視鏡手術のことを指すのではなく、術後にもっとも良い機能が得られる手術を指すのだと思われます。

この研究会ではいろいろな症例をご発表いただき、「低侵襲手術とは?」を探求し、その結果を共有できることを期待しています。今回の研究会が「真の低侵襲」について再度見直すきっかけの会になればと考えております。

最後になりましたが、手術術式の検討として、ヒルシュスプルング病については、粘膜抜去などを開始する位置、メルクマーク、筋筒の長さなどに関して多くの施設から術式の発表をしていただくワークショップや、先天性胆道拡張症について、膵内胆管の切除や肝管空腸吻合の工夫に関してのワークショップを予定しております。

できるかぎり多くの皆様のご参加、ご協力を賜り、実りある研究会にしたいと思っております。ご支援どうぞよろしくお願い申し上げます。

第77回直腸肛門奇形研究会

会長内田 恵一

(三重県立総合医療センター 小児外科 診療部長)

このたび、第77回直腸肛門奇形研究会をお世話させていただくこととなり、誠にありがとうございます。今回の開催におきましては、第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム会長の金森豊先生に多大なるご尽力を賜り、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

歴史を紐解けば、直腸肛門奇形への外科的手技は7世紀に最初の文献的記載があります。ギリシャの外科医Paulus Aegineta(625-690)が残した著書の中には、「新生児は、稀に膜などでおおわれて肛門が閉鎖されていることがある。その時、可能であれば指を用いてその膜を破り、不可能なら鋭利な刃物で膜を切りワインをかけて治癒させなければならない。」と記述されています。この手技は数世紀にわたり行われたようですが、多くの症例では肛門狭窄から腸閉塞をきたし死亡していました(大腸外科学書、金芳堂)。

以来、直腸肛門解剖学の発展、直腸肛門奇形分類の発展、そして、外科的治療の発展があり、今日に至っています。直腸肛門奇形は、新生児外科症例では発生頻度が最も多く、すべての小児外科医が経験されています。しかし、奇形の複雑なバリエーションや解剖学的な異常に対する手術の困難さや、術後管理と術後合併症の問題などで悩まされることも多く、各施設で手術術式や術後管理の工夫が様々なされていると思われます。そこで、今回の主題は、「鎖肛の手術と術後管理 古今東西」としました。各施設で試行錯誤の結果、現在行うようになっている、手術法、術後管理法、合併症対処法などに関して、建設的なDiscussionの場になればと考えます。そこで以下の演題のご応募を希望いたします。

  1. 肛門形成術の適切な時期
  2. 男児中間位鎖肛に対する腹腔鏡下手術の功罪
  3. 術後管理法(創管理、ブジーの工夫、排便管理)
  4. 排便機能不良例に対する管理方法や機能改善への試み
  5. 再手術症例(直腸・肛門脱、瘻管再開通、尿道瘻損傷、カットバック後再手術)
  6. 稀な症例報告

どうぞ多くの演題応募とご発表をよろしくお願いいたします。

第25回日本小児外科漢方研究会

会長松藤 凡

(聖路加国際病院 小児外科)

第25回日本小児外科漢方研究会をお世話させていただくことになりました聖路加国際病院小児外科の松藤 凡です。本来は2020年に開催予定でしたが新型コロナ禍のため、1年延期となりました。今回も第37回日本小児外科学会秋季シンポジウムと同時期にPSJM2021として開催いたします。

漢方が診療に取り入れられて、その有効性が認識されるにしたがって、臨床の場で広く使われるようになりました。また、漢方は、医学教育カリキュラムにも取り入れられています。幾つかの疾患では、漢方薬の作用機序や有効性に関する医学的エビデンスも集まってきました。本研究会においても、消化管疾患、便秘、胆汁うっ滞性疾患、乳児肛門周囲膿瘍、リンパ管腫・奇形などの小児外科疾患に関する報告が年々増えてきました。

第25回の本研究会では、広く演題を募集します。特に診療ガイドランが公開されている小児外科疾患のなかから、慢性機能性便秘症、ヒルシュスプルング病類縁疾患、胆道閉鎖、リンパ管腫・奇形に関する演題を要望します。

本研究会も四半世紀を迎えます。節目となるこのたびの研究会では、これまでに蓄積された基礎研究や臨床経験を御発表いただき、質の高いエビデンスに繋げるための活発な討論を期待しています。

東京オリンピック開催後の秋に東京でお会いできることを楽しみにしております

第50回日本小児外科代謝研究会

会長奧山 宏臣

(大阪大学小児成育外科)

この伝統ある日本小児外科代謝研究会の第50回という大きな節目の会を開催させていただきますことを大変光栄に存じます。また昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でPSJM全体が中止となりましたので、二年ぶりにこの研究会で皆様にお会いできますことを何より楽しみにしております。大阪大学小児外科関連での開催は、第7回(岡田正)、第33回(窪田昭男)、第36回(和佐勝史)、第42回(米倉竹夫)、第46回(川原央好)に続いて6回目となります。外科代謝栄養学はこれまで当教室がずっと取り組んできた領域でもありますので、医局員一同しっかりと準備を進めてゆきたいと思います。

今回のテーマは腸管リハビリテーションとしました。腸管リハビリテーションは、腸管不全に対する急性期の管理から、慢性期の栄養管理、中心静脈カテーテル管理、腸管アダプテーション、腸管延長術、さらには小腸移植までをカバーする包括的な医療です。近年諸外国においては、多職種連携による腸管リハビリテーションプログラムが腸管不全患者の生命予後やQOLを改善することが報告されています。そこで腸管不全に対する各施設の取り組みや診療体制、その成果をご発表いただけましたら幸いです。また昨年、本研究会会員の皆様にご協力いただいた腸管不全診療実態のアンケート調査結果も報告させていただきます。皆様の発表と併せて、本邦における腸管不全診療の現在地に迫りたいと思います。もちろん腸管不全以外のテーマや、医師以外の職種の方々のご発表も歓迎いたします。

本研究会の50年を振り返り、さらなる発展に繋げることができるような実りある研究会にしたいと思います。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

第31回日本小児呼吸器外科研究会

会長黒田 達夫

(慶應義塾大学 小児外科)

このたび、第31回日本小児呼吸器外科研究会を会長として開催させていただくことになりました。今年度の研究会は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて1年延期されて2021年10月28日(木)~29日(金)に東京都千代田区のベルサール神田で開催予定のPSJM2021の一環として、開催準備を進めております。当初31回研究会会長に内定していた金森豊先生が同時開催の第37回日本小児外科学会秋季シンポジウム会長を務められるため、重任を避ける規定により私が会長を拝命いたしました。今回の主題は「嚢胞性肺疾患;病理組織に基づいた分類とガイドラインの検討」とさせていただきました。本研究会では小児外科医のみならず小児呼吸器科、小児放射線科、小児病理の先生に参加していただいてワーキンググループを設置して、嚢胞性肺疾患の分類の見直しと、新たな定義による分類に基づいた診療ガイドラインの策定を行ってまいりました。先天性嚢胞性肺疾患の従来の分類や考え方は各疾患の境界が曖昧で重複を排除しないために臨床兆候とも乖離したものでした。これまでの病理学的な見直しや発生の検討に基づいて診療ガイドラインの素案がまとまったのを一つの区切りとして、これを公開してここまでの議論や問題点をご説明し、皆様のご意見を広くいただきたいと思います。その他にも上気道狭窄、気管外科など小児呼吸器外科に関連する演題を広く募集いたします。積極的な演題のご応募をお待ちしています。

新型コロナウイルス感染の終息しない中、ハイブリッド形式での学術集会となり、議論を進める上で不便なことも多いかと思いますが、私たちの大事にしてきた学術の灯を消さないように研究会を盛り上げたいと思いますので、皆様のお力添えをよろしくお願いいたします。